「湯灌とはご遺体を綺麗に洗い流し、着付けをして柩に納める仕事です」

こう書くと、湯灌という仕事が非常に丁寧な仕事だという印象を受けるかもしれませんが、実態はそうではありません。むしろ「時間効率」を優先させるために、人様の目に触れない部分では結構乱雑に扱ってしまうことがあります。


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ちなみに私は、もし自分の身内が葬儀を行うことがあったら「湯灌なんてオプションやめておけ」と声を大にして言うでしょう。なぜならば……。

カッコよく着付けできるのは状態の良い遺体だけ


以前も少し触れましたが、納棺師の仕事をテーマにした映画『おくりびと』がスマッシュヒットした際、「映画のようにカッコよく着付けしてくれ」と業者や遺族からせがまれることが増えました。

まぁやってできないことはないんですけど、それができるのは天寿を全うしたとか、畳の上で死ねた人とか、ごくごく限らた一握りの遺体だけ。偶然なのか縁なのか、私の経験上、そうでない遺体を洗う機会の方が多かったので、そういったリクエストが上がって困惑するケースが多かったです。

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出典:kousaiceremo.com


まず、映画のように布団の中でもぞもぞと遺体を弄ってしまうと、状態の悪い遺体だと皮膚がズルッと剥けてしまったり、本来は付かないはずの傷がついてしまう場合があります。

そして遺体に傷が付くと出血することがあるんですが、実はこれが一番厄介。なぜならば、遺体から出る血というのは出っ放しになるからなんです。

その場しのぎとしてサージカルテープ(絆創膏)を貼ることもありますが、出っ放しになっている以上、その程度では出血は防げません。完全に止血するには、保存用のドライアイスを傷口に当てて皮膚を焼くぐらいしか手立てがなくなるんです。

で、そうなると結果的に遺体が傷が付いてしまう、と。遺体は物理的にも慎重に扱う必要があるんです。

にもかかわらず、あんな映画のように真似をしろというのは少々無理があるわけでして、それでも仕方なく「カッコよく」やったことはありました。いろいろな裏技を駆使して(苦笑)



あらかじめ仕込んでおく


さて、その「カッコよく〜」のリクエストにお応えするために、どう言った裏技を駆使するのかをお話ししてみたいと思います。


まずは事前に遺体の状態を確認する

まずは何より事前に遺体を細かくチェックしなければなりません。この人は何が原因で死んだのか、どこか傷はないのか、皮膚の状態はどうなのか、保冷庫から遺体を取り出し、問題が発生しそうな部分は事前に処置を施しておきます。


処置の方法

具体的に言うと「出血しない」「体液が漏れない」等の処置を施すのですが、ここの部分が実に重要になります。

まず口や鼻といった、体液が漏れる可能性のある「穴」を塞ぐ作業をするのですが、通常は綿花だけで間に合わせるところを、万が一のことを考えて吸水ポリマーを混ぜた綿花を詰め込んだり、場合によっては市販の接着剤等を使って塞ぐなど厳重に塞ぎます。


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そして下の穴についてですが、こちらは綿花詰めだけでは不安な場所なので、何よりもコスト的な問題を考慮しペット用シート(オムツ)を使用します。

「人間にペット用品を使うなんて不適切だ!!」と思われるかもしれませんが、湯灌屋に限らず葬儀屋なんて会社は、現代社会の企業同様に「利益至上主義」「コスト優先」でしか物事を考えていませんので、見えない部分は徹底的にコストカットをしてきます。たとえそれが人道を外れた行為であっても。

その他目立つ傷については、こちらもペット用シーツを適度に切って貼り付け、サージカルテープで損壊場所をガッチリと固めるわけですが、この作業が実に機械的というか、ある種の梱包作業みたいな感じになってしまうんですよね……。


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そんなわけなの、で私の場合はどうしても仏さんに対し「申し訳ない」という気持ちが出てきて仕方がありませんでした。



欠落箇所の修復

遺体によっては体の一部が欠落していることもあるので、そこの部分を五体満足になるよう(見えるよう)修復します。

見えない場所ならどうってことはないんですが、そうでない場所はこれも大変な作業になります。

損壊した部分があまりにもひどい場合はエンバーミングといったより専門的な作業を施さなくてはなりませんが、日本の葬儀は火葬から埋葬までの時間に余裕が無く、火葬については火葬場の予約の都合もあることから「綿花で欠落部分を作る」とか「包帯で隠す」といったように手短に済ますことがほとんどでした。

もっとも、エンバーミングが必要な遺体であれば「カッコ良く〜」とリクエストしてくる方は少ないのですが、それでも「なんとかしろ」という方も当然いますので、そうなってくると梱包どころかプラモデルを作るかのごとく作業を進めた記憶があります。



遺体=故人ならばその意思を尊重するべき


これは日本特有の文化だと思うのですが、欧米諸国のそれとは異なり「亡骸は大切に葬る」といった習わしがあります。大きな事故等では「遺体の回収に成功した」といったニュースが話題に上がるぐらいですからね。

もちろん私はこれを否定する気は少しもありませんし、日本人だからこそ持ちうる文化なのですから、この文化はきちんと残していくべきでしょう。


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ただ、それがあまりにも度が過ぎてしまうと、結果的に「ご遺体を杜撰に扱ってしまう」ことにもなりかねませんので、もう一度「死」について考える必要性があるんじゃないかなと私は考えています。

普通の湯灌、納棺ですら「作業」のように感じてしまうぐらいなのですから、「カッコ良くやってくれ」なんて頼まれた日には、そりゃもう現場の人間は……。遺体を人ではなく単なる「物」として取り扱わないと、仕事が成り立たなくなってしまいます。


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葬儀式は何が一番大切なのか、そして遺族は故人のために何をしてあげるべきなのかを、今一度見つめ直す時期が訪れているのではないでしょうか。そう、故人の遺志を心底から尊重するならば何をするべきなのか、ということを。

そして元湯灌師だった私がたどり着いた答えは


「湯灌なんてオプションやめておけ」


だったんです。

ついでに言えば


「葬式も墓も要らん。残った骨は適当に散骨してくれ」


とも。

そういえば先月亡くなった俳優の神山繁さんはこう言ってたそうです。

神山さんは生前「たまに思い出してくれればいい。亡くなったら、ただのカルシウムだよ」と話していたそうで、「葬式無用、戒名不要」と伝えていた。葬式は行わず、近親者のみで見送った。「お別れの会」なども故人の意向で一切行わない予定という。

引用元:Yahooニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170116-00000074-dal-ent


この方がずっとずっと「カッコいい」ですよね、人として。




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